商店街と補助金1

木下斉氏が書かれている本を何冊か読みましたが、補助金を目の敵にしているのがよくわかります。その考えはよくわかります。

私自身も補助金申請の支援を仕事をすることはありますが、補助金の取得、事業自体を止めた方がいいのではとアドバイスをすることもあります。

実際に商店街に補助金が必要かどうかという議論については、商店街に限らず、モノづくり補助金などほとんどの補助金は不要だというスタンスです。儲かるなら借入でやればいいと思いますし。

一方で、補助金はかなり役立っていた面もあります。補助金はスタートアップには非常に有効だからです。特に過去においてはほとんどの企業がスタートアップだったわけですし。だから、補助金については現在だけで語るのはちょっと酷いのではないかとも感じています。

過去の街においては商店街というものがスタートアップとして費用対効果も高かった。そして 調達部門として、エンターテイメントのとして、宣伝媒体として街の中で非常に高い存在価値があったのは間違いありません。だからこそ政治と繋がることで、補助金という流れになっていたのは仕方がなかっただろうとも思います。

そしてほとんどの人は変われないので、補助金を取ることがいまだ価値となっているんだろうと思います。そもそも団体(組合)という特殊性もあり、補助金を取ることが最大の目標というのもわかります。

今の商店街組合の状況を見ると、補助金が無ければほとんどの組織は存在していないだろうし、アーケードさえなければ今からでも多くの組合は解散するだろうとも思っています。

じゃぁ、商店街組合が無くなってもいいのかということについてはどうかですね。 法人の形である必要はないんですが、 結局のところ、何かをしようとするならば箱は必要になるはずですし、それなら今の組合の形でいいじゃないかとも思います。

一人では何もできない。そして、何もやらなくなったら最終的には寂れていくだけです。寂れていい。商店街もなくなっていいという決断ができれば、組合を解散しちゃえば一番手っ取り早いのも事実だと思います。

ただ、組合を潰すという判断を適切なタイミングでできる人間はいないので、現状に至っているんだとも思っています。

アーケード1 稲荷商店街

アーケードの問題としていつも事例に上げているのが阪急上新庄駅にある稲荷商店街です。私が東淀川区に一時住んでいたということもあるので、なじみがあるというのが一つですが、商店街の未来がわかりやすいというのもあります。

4年ぶりぐらいに訪問してみました。

上新庄駅北改札口から徒歩1分の所にある駅前商店街なのですが、現在は完全にシャッター商店街となっています。(営業されている店舗もあるのですが、全体からするとやはり一部)

大阪のアーケード商店街の中でもかなり劣化とシャッター化が進んでいるので、よく勝手に事例として使っています。(申し訳ありません。)

上新庄駅自体は一日乗降客数が50,000人という大きい駅です。淡路駅と並んで東淀川区を代表する駅であり、南改札口付近は大手のチェーンが揃っています。大阪経済大学、北陽高校を始め若い人たちが多数住んでいるということもあり、消費力も比較的高い地域になっています。ラーメン店の激戦区でもあり、地価も上がっているなど、本来ならシャッターになるはずはないという環境です。

それでもシャッター商店街になっていて、アーケードも劣化しているという原因を探っていくのが、実は商店街の問題を解決していくために必要なものではないかと考えています。

基本的には立地は問題ないはずです。アーケードのないところであれば、近くに新規出店店舗は山ほどあります。アーケードの劣化によるイメージの悪さはありますが、実は台風でやられたことで、空が開け、イメージが良くなっています。(もちろんアーケードの劣化による落下物による事故が起きないかという恐れはありますが。)

具体的に商店街の方にお話を聞いたわけではないので想像に過ぎないのですが、商店街の組合を引っ張っていく人がいなくなってしまったことが原因ではないかと思います。

そして、昔儲けていたことから、安い値段で貸し出すことを行わず、今に至ったのではないかと推測しています。結局のところ賃貸については貸出できる建物があるかどうかが重要ですし。(老朽化・貸出意志)

久しぶりに稲荷商店街に訪問したところ、思っていたよりもいい環境になっていると思ったり、劣化したアーケードの不要性を示す事例にもなるかと改めて思ったりしました。

本当に商店街の問題を考えている人は一度訪問することがおすすめです。

商店街とアーケード

商店街支援を行っていて、最も問題であると思うのはアーケードの問題です。

アーケードは雨よけ、日よけにもなりますし、何より商店街を表すシンボルというところもあります。だからこそ大きい商店街はほとんど設置がされています。

しかし、アーケードの負担は大きく、修繕費、電気代で毎年百万円単位でお金がかかるのは当たり前となっています。

昔の利用者が多く、利益が出ている時期であれば、特に問題はなかったんだと思いますが、現状は中心部の広域型商店街以外に設置されているものは負債となっていると思います。

本来であれば、通行者数や利用者数からアーケードの費用対効果を数値的に判定して、維持か撤去かを決めていくことが必要なんだとは思いますが、アーケードの形や長さもバラバラなので、中々難しいですね。

アーケード撤去の話も出てきていますし、過去に支援もしていますが、同意を取ることが一つのハードルになります。資料や手続きの準備ということもあれば、商店街のシンボルというところが撤去できない理由の一つともなっています。

また、財務的にもアーケードの撤去には全部で数千万円のお金と長期の時間がかかります。その間は営業ができない場合もありますし、大体の場合はアーケード撤去後の各店舗の壁や看板付け替え費用などが発生する場合もあります。

商店街のアーケード問題は今後10年~20年後に噴出するとは思いますが、それまでに対応できるかどうかで、将来の街の様子が変わってくると思います。

商店街とPEST分析(その2:世帯人口)

世帯人口が商店街の衰退に影響していると考えているのですが、
その理由は必要となる能力が変わっていくということだと思います。特に生鮮3品と呼ばれるものに大きな影響があると考えています。

大家族であれば基本的には費用を削減の優先順位が高くなり、
コストを掛けない経営の、個人店舗が強かったと考えられます。
食料調達、調理、清掃などの負担も大きかったので、専業主婦の必要性も高かったため、結果として専業主婦が昼間に多数購入するという文化に合っていたことも一つだと思います。

核家族になると共働きも増え、加工の手間を省きたい人や量も必要となくなるために加工力が求められることとなります。一品の単価も下がっていくので、客数も必要になります。

単身世帯になれば、家庭内で料理をすることも減り、量も少なくなってきます。野菜は1/6玉、魚は切り身となり、加工の手間は増える一方で、単価は上がらず、客数は更に必要になります。高齢単身世帯が多い場合は更に顕著になってきます。こうなってくると個人店舗では成り立たなくなり、鮮魚店→八百屋→肉屋の順に閉店が進んでいくという流れが多くあります。

生鮮3品がないから商店街にお客様が来てくれないという話をよく聞きますが、世帯が小さくなっている中で、商売が通常では単独店は成り立たない、それならどうするのかということを考えて、対応していく必要があると考えています。

商店街の事業調査(商店街DD)

商店街の支援を多数行っていますが、私は事業再生も専門としていることもあり、
事業調査(商店街事業の調査)を簡単に行うようにしています。
商店街DD(デューデリジェンス)と個人的には思っていますが。

【外部環境】
・周辺の人口構成はどうなっているか。
・現在の利用者はどういう人なのか。
・最寄り駅の利用者はどれぐらいか。
・競合施設はどうなっているか。

【内部環境】
・なぜこの商店街ができたのか。
・なぜアーケードがあるのか。
・商店街の立地はどうなっているか。
・商店街地域の地権者の状況はどうか。
・商店主の年齢はどうか。
・商店主の引継ぎ(事業承継)はどうなるか。
・商店街の業種・店舗はどういったものがあるか。
・商店街組合の財務状況はどうか。

本当は各店舗の売上推移などまで調べられればいいんですが、
プライバシーの問題もあり、これは難しいですね。

事業再生は外部環境と内部環境の両面から分析をして、
状況に合わせた施策の実施する必要があります。

商店街支援をする上で、個人的にもっとやればよいと思っているのは
この内部環境分析、外部環境分析だと思っています。

実際にやるとマイナス要因の多さとプラス要因の少なさが目立ってくると思います。
マイナス要因が多い場合には事業承継・組合の解散も視野に入れて考えていくことが必要になると思います。

商店街とPEST分析(その1)

商店街を支援している中で、PEST分析がないということを感じて作成してみました。
大阪で活動しているので、基本的には大阪に関係するもので作成しています。

作成してみると色々と見えてくるものがあります。
特に商店街の話題の中で出てくる、大店立地法を含む『まちづくり三法』も古い話だなと感じます。

商店街の活力低下については世帯人員の大幅な減少なのではないかと感じています。
また、商店主の年齢の上昇、IT対応の遅れなんだろうということも大きいでしょうが。

大阪の商店街PEST(1.4MBあるので、ご注意ください。)

細かいところは省いて、ざっくりとしていますが、トレンドは分かるかと思います。

また、商店街に対する過去の補助金についても調べていきたいと思っていますが、
WEB上には追いかけるための資料がないので、これは図書館や大阪市に問い合わせる必要があるんだと思っています。